京都2020コミットメント

ゼロ素案(2018.3.5)

地すべり災害リスクの理解と軽減を地球規模で推進するための京都2020コミットメント

ISDR-ICL 仙台パートナーシップ2015-2025, 仙台防災枠組み2015-2030および2030アジェンダ・持続可能な開発目標に向けて-

 

前文

地すべり災害は、山地、都市域、沿岸域、および島嶼部で、脆弱な人間の居住地を脅かす土や岩の危険な動きにさらされることによって引き起こされる。気候の変動と地球温暖化によって、豪雨の頻度および/または強度の増加、降雨の場所および周期性の変化、および永久凍土と氷河の後退は、地すべりが起こりやすい地域の地すべりの危険度を大幅に高める可能性がある。

道路や鉄道の建設を含む山地や沿岸域の開発、そして人口の増加と移動による森林破壊を含む都市域の拡大は、地すべりの災害をうける地域を増大させる。地すべり災害リスクの軽減は、山地や斜面に住む人々が地すべりにさらされているすべての国/地域における地球規模の重要な課題である。

国際斜面災害研究機構(ICL)は、仙台市で開催された第3回国連防災世界会議(WCDRR)のワーキング・セッション「潜在的リスク要因」において、地すべり災害リスクの理解と軽減を地球規模で推進する仙台パートナーシップ2015-2025を提案した。仙台パートナーシップは、17の国連、国際、国内機関により採択され、署名された。その後、共同作業が行われ、誰もが無料でアクセスしダウンロードできるフルカラーの本「ISDR-ICL仙台パートナーシップ2015-2025」(第4回世界地すべりフォーラム論文集5巻の内の第1巻)の編集・出版、地すべりの双方的教材「Landslide Dynamics(地すべり動力学)」の編集・出版、また、2018年からの国際斜面災害研究機構のフルカラージャーナル「Landslides」の毎月発行への移行を実現した。

仙台パートナーシップ2015-2025の後半以降も、多くの国々にある山岳地帯および沿岸地域における人間の居住地に対する地すべりのリスクは、引き続き高まる可能性が高い。2015年9月、国連総会は持続可能な開発のための2020アジェンダと目標11の「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」を含む17の持続可能な発展目標(SDGs)を採択した。ISDR-ICL仙台パートナーシップ自体と2030アジェンダおよび仙台防災枠組み2015-2030への自発的コミットメントとして、第4回世界地すべりフォーラムの参加者は、地すべり災害リスク軽減のための行動を推進する地球規模での連携を中長期的に推進するための安定した枠組みである京都2020コミットメントの最初の概念を検討し、それを承認した。

リュブリアナ市で開催された第4回世界地すべりフォーラムの二日目の2017年5月30.日に「地すべり災害リスクの理解と軽減を地球規模で推進するためのISDR-ICL仙台パートナーシップ2015-2025のための政府間ネットワークと国際斜面災害研究計画(IPL)の強化」を目的とするハイレベル・パネルディスカッションが開催された。パネリストは、この分野の専門家、仙台パートナーシップの署名機関 (ICL, ユネスコ, WMO, FAO, UNU, ICSU, WFEO, IUGS, IUGG, 日本政府内閣府, イタリア市民保護庁, ダボス防災フォーラム)と、新しい署名機関(インドネシア防災庁、スロベニア共和国政府市民防衛・防災庁、ベトナム天然資源環境省, IRDR科学委員会、ヨーロッパ地質調査所連合)からの代表者である。

このハイレベル・パネルディスカッションの結果は、仙台パートナーシップを推進するための円卓会議で再検討され、参加者は地すべりリスク軽減に関する2017リュブリャナ宣言を採択した。この宣言は、2020年11月に京都において第5回世界地すべりフォーラムを開催する計画と、2025年、2030年およびそれ以降にわたて、地すべり災害リスクの軽減のための活動を中長期的に推進する地球規模の同盟の構築を目指す京都2020コミットメントの準備を支持するものである。

 

仙台パートナーシップから京都2020コミットメントへ

京都2020コミットメントは、仙台パートナーシップの以下の決議を再確認する予定である。

  •   地すべり災害は、山地、都市域、沿岸域、島嶼部に存在する脆弱な居住地が、土と岩の危険な運動にさらされることにより引き起こされる。
  •   気候変動は、地すべりが発生しうる地域において、豪雨の頻度あるいは/及び強度の増大、発生場所、期間の変動によって、地すべりのリスクを増大させる。
  •   地球温暖化は、雪や氷を溶かせることにより、永久凍土地域の地すべりや氷河湖決壊洪水の危険度を増大させる
  •   道路や鉄道建設及び人口移動に伴う都市域の拡大を含む山地と沿岸域における開発は、地すべり災害を受ける危険性を増大させている。
  •   頻繁ではないものの、大地震は、高速長距離運動地すべりや液状化を引き起こすポテンシャルを持っている。 地震が誘発する沿岸域や海底の大規模地すべりあるいは巨大地すべり(数百mから千mの深さのあるもの)は巨大な津波を引き起こす可能性がある。このような危険な土塊や水塊の衝撃が、 脆弱な人々を直撃した場合には、大変壊滅的な被害をもたらしかねない。
  •   降雨、地震および火山噴火等の複数の誘因が同時に作用する場合には、ラハール(火山泥流)、土石 流、落石、巨大地すべりなどの壊滅的地すべりが発生し、より大規模な衝撃を与えかねない。
  •   地すべり災害の理解のためには、複合災害の観点と社会的・制度的な脆弱性に注目することが必要 である。地すべり災害の規模を事前にアセスし、効果的な対応策を立案するには、社会的・制度的 そして物理的な脆弱性についての研究が必要となる。
  •   土地利用、都市計画、建築基準、リスクアセスメント、早期警戒システム、防災法制度や政策の立 案、統合的研究、保険、そして何より実際的な教育と関係機関による意識向上の努力などの人間の 諸活動により、危険な自然現象にさらされる可能性や脆弱性を大きく変化させることができる。
  •   最新かつ先進的な知識を用いて、リスクの洗い出し、脆弱性の評価、発災時期の予測や被害の評価 を含む災害危険度を理解することは、挑戦的な課題である。災害対策の有効性は災害リスク(危険 な自然現象あるいは出来事と社会的脆弱性)の理解のための科学技術開発、政治的な関与、そして 市民の防災意識と知識に依存する。
  •   災害リスクの理解と軽減、特に社会的・制度的脆弱性を軽減するためには、高いレベルの社会的投 資、財政投資が不可欠であり、政策・計画・研究・能力開発、そして途上国、先進国の誰もが無料 でかつ容易に利用することができる出版物とツールの作成を統合的に組み合わせて実施することが 必要である。

 

京都コミットメントの優先行動

我々は、社会的および財政的投資をともなう研究と能力開発に関する地すべり災害リスクの理解と軽減を地球規模で推進するための京都2020コミットメントの以下の優先行動に同意する。

 

アクション 1 地すべりに関して発災時期、発災場所の両面でより高い精度と信頼性を持った、人間を中心においた早期警報技術を、気候変動下にあることに特に留意しつつ開発すること

アクション 2 ハザード及び脆弱性を表したマップの作成を前進させること。これには、マルチハザードのリスクの識別と管理の一環として信頼できる精度の向上した脆弱性及びリスク評価が含まれる。

アクション 3 地すべり計測、試験、解析、シミュレーション、そして特定の地域の地すべりに適した効果ある早期警戒に関する技術を、自然、文化、財政面を考慮して発展させること。

アクション 4 ISDR-ICL地すべりの双方向的教材を地すべりの発生しやすい地域に適用し、先進国ならび開発途上国のユーザーからの反応をもとに改良すること。

アクション 5 総合的研究、能力開発、知識の移転、意識の向上、訓練、教育活動を通じて、社会とともに自由なコミュニケーションを推進すること。これは、地すべり災害リスクを軽減するための効果的な政策と戦略を策定し、大災害へ発展する危険を防止する能力を強化し、救援プログラムの有効性と効率性を高めるためのものである。

アクション 6 大規模な地すべりや土石流に及ぼす気候変動の影響を調査し、とくに発展途上国における早期警戒と避難に供するために、有効な降雨予測手法の開発を促進すること。

アクション 7 津波の原因となる地震の際に生じる海底地すべりのメカニズムと動力学を調査し、同時に災害評価と災害軽減策を開発し、高度化すること。

アクション 8 壊滅的な巨大地すべりの地質工学的研究を促進し、その予測と災害評価手法を開発すること。

アクション 9 研究者、政策立案者、資金提供機関の共同の努力を促進することによって、地すべり災害リスクを理解し軽減する先端的研究を行うための新しい取り組みを促進すること。

アクション 10 地域及び国レベルで、それぞれの国が京都2020コミットメントの優先行動No.1-9の達成に向けた進展の状況と成果を示すために、進捗報告会を開催することにより、監視、報告、進捗評価を促進すること。これらの会議への参加者および関連する利害関係者は、月刊のフルカラージャーナル「Landslides」でこの進捗状況を報告するよう招待される。

 

京都コミットメント

参加している全ての関係者によるコミットメントは、3年ごとに開かれる世界地すべりフォーラムで定期的に再検討され、そして更新される。

 

京都2020コミットメントの共通基盤を提供するために、国際斜面災害研究機構(ICL)と国際斜面災害研究計画(IPL)の地球規模推進委員会で行う基本的な中核的コミットメントは次のとおりです。

1. 3年ごとに「世界地すべりフォーラム」を開催し、その場で、参加全機関による京都2020コミットメントの進展の報告と、さらなる発展が検討される。

2. Landslides: 国際斜面災害研究機構のジャーナルが毎月フルカラーで発行され、参加するすべての機関に配布される。

3. 開発途上国および若手研究者の活動を推進するため、投稿料およびフルカラー印刷料は引き続き免除される。

4. ICLは、京都2020コミットメントのすべての参加機関が、「Landslides」ジャーナルにその活動のニュースと報告を投稿し、公表する権利を提供する。すべての参加機関には、共通のプラットフォームとして、ジャーナル(2002年から現在)のすべての印刷物に対して、コピー及びデジタルアクセス権(トークン)を提供する。

5. ICLは、Landslide Dynamics(地すべりダイナミクス):地すべりの双方向的教材をフォーラム毎に、公共教育の中心的な活動として公開し、更新する予定である(最初の教材(Vol.1とVol.2)は、2018年1月と2月に出版された。この教材には、教育用のPPT教材、ビデオ教材、と参考論文・レポートのPDFが、付属している。

6. ICLと国際斜面災害研究計画(IPL)地球規模推進委員会は、災害リスク軽減のための隔年の防災グローバルプラットフォームや、UNESCOまたは他の場所でにおいて、ICL、IPLの研究、管理、戦略的検討会議と共に、毎年IPLシンポジウムを開催し、ISBN番号をつけた本を出版する。

7. ICLおよびIPLグループによるその他のコミットメントには、以下が含まれます。

  • 地すべり専門家は、地方自治体や地すべりのリスクに直面している地域社会からの信用と信頼を得て、地すべりのリスクを効果的に伝え、リスクを軽減するための地域活動を推進するよう求められている。このように、ICLとIPLのグループは、京都2020コミットメントの活動を通して、地方レベルで良好な協力対話を推進する。
  • 政策立案者、すなわち地すべり災害危険度軽減に取り組む中央政府当局と地すべり研究者およびエンジニアの間の協力を促進するため、ICLメンバーと高級官僚の合同の円卓会議を3年ごとのフォーラムで開催する。
  •  降雨に起因する高速長距離運動地すべり、地震で誘発される巨大地すべり、沿岸域および海底地すべりの影響を受ける国/地域のコミュニティセーフガード政策について、フォーラム毎に開催する特別課題セッションで検討する。
  • できるだけ多くの国/地域において、京都2020コミットメントへの関与と、事務局との連絡と調整を確実にするために、可能であり適切であれば、連絡中心(Focal Point)を特定する。

 

コミットメントに参加するための呼びかけ

第5回世界地すべりフォーラムに参加するに地球規模、地域規模、国、地方の機関および団体は、地すべり災害リスクを理解し軽減するための明確なコミットメントへの参加を通じて、このコミットメントに参加し署名することにより、こののイニシアテイブを支援するよう招待される。参加希望機関は、京都コミットメント事務局に連絡されたい。

 

ホスト組織と事務局

国際斜面災害研究機構(ICL)は、ISDR-ICL仙台パートナーシップ2015-2025、仙台防災枠組み2015-2030、および2030アジェンダ持続可能な開発目標のへの自発的コミットメントとして京都2020コミットメントのホストを務めます。 ICL事務局(京都)が、京都2020コミットメントの事務局を務めます。

 

署名欄:   

サイン、氏名、 役職、 所属機関,     年月日

 

ANNEX

 

参加者によるコミットメントのリストは、ANNEXに掲載される。

 

注1:

国際斜面災害研究機構(ICL)メンバー、他の団体(国連機関、京都2020コミットメントの政府及びNGO関係者、そしてそれらの共同グループ)によるコミットメントが掲載される。

例:

IPL活動、WCoE活動、ICLの課題別および地域別活動は、ICLメンバーによるコミットメントの1つになり得る。

WLF5でのセッションとしてIRDR、UNESCO、ICLが共同で計画しているユネスコの指定された場所(世界遺産、ジオパーク、生物圏保護区)における地すべりとハザード評価

 

注2:

京都2020コミットメントに招待される署名機関は、以下の通りです。

1. 国際斜面災害研究機構(ICL)支援機関(ユネスコ、UNISDR、FAO、WMO、国連大学、ICSU、WFEO、IUGS、IUGG)

2. 仙台パートナーシップ署名機関(日本、イタリア、クロアチア、スロベニア、インドネシア、ベトナム政府、IRDR、ヨーロッパ地質調査所連合、日本学術会議、京都大学、グローバルリスクフォーラム)

3. 国際斜面災害研究機構(ICL)の会員機関、賛助機関および准会員

4.  京都2020コミットメントに貢献でき、かつ有償で月刊ジャーナルの配布を受けることのできるその他の機関

 

 

京都2020コミットメント事務局

特定非営利活動法人国際斜面災害研究機構 事務局(ICL)

〒606-8226 京都市左京区田中飛鳥井町138-1

Tel:+81 (75) 723 0640, Fax: +81(75) 950 0910

e-mail: secretariat@iclhq.org

IPL WEB: <http://iplhq.org/>, ICL WEB: <http://icl.iplhq.org/>, WLF5 WEB: <http://wlf5.iplhq.org/>

 

参考文献

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Sassa K (2015) ISDR-ICL Sendai Partnerships 2015-2025 for global promotion of understanding and reducing landslide disaster risk. Landslides 12 (4): 631-640

Sassa K (2017a) Progress of ISDR-ICL Sendai Partnerships 2015-2025 for global promotion of understanding and reducing landslide disaster risk. Landslides 14 (3):783-788.

Sassa K (2017b) The 2017 Ljubljana Declaration on landslide risk reduction and the Kyoto 2020 Commitment for global promotion of understanding and reducing landslide disaster risk. Landslides 14 (4): 1289-1296.

Sassa K (2017c) Participants in the Fourth World Landslide Forum and call for ICL members, supporters, and associates. Landslides 14 (5): 1839-1842.

Sassa K (2017d) The Fifth World Landslide Forum -Implementing and monitoring the ISDR-ICL Sendai Partnerships 2015-2025- Timeline of the WLF5 organization process and call for session proposal. Landslides 14 (5):1857-1859.

Wahlström M (2015) Preface. Landslides 12 (4):629