高速地すべりシミュレーション(LS-RAPID)と
地すべり運動による津波シミュレーション(LS-TSUNAMI)
国際斜面災害研究機構 (ICL) は、高速地すべりの発生と運動をシミュレートする統合モデル(LS-RAPID)と地すべりに起因する津波の発生とその伝搬をシミュレートする統合モデル(LS-TSUNAMI) を開発しました。
LS-RAPIDシミュレーションには、非排水動的載荷リングせん断試験から測定あるいは計測値から推定された地盤工学的なパラメータが必要です。LS-RAPIDの理論と、高速地すべりの発生と移動をシミュレートするために必要な地盤工学的なパラメータとその特性について述べます。
地すべりに起因する津波をシミュレートするLS-TSUNAMIモデルは、次のような考え方で開発されました。1)津波は、海底を地すべり土塊が移動することによるの海底の鉛直的な盛り上がり(標高の変動により引き起こされる。2)海底の標高の変動は、LS-RAPIDシミュレーションによって得られる地すべり土塊の深度の平面分布の経時変化を与える。3)津波発生・伝搬シミュレーションは、1997年にユネスコが発表したIOC津波マニュアルにあるものを用いる。
詳細とそのマニュアルはLandslide Dynamics:ISDR-ICL Interactive Teaching Tools (Springer) (http://www.springer.com/la/book/9783319577739) に掲載され、実際の地すべりへの適用はICL World Report on Landslides (http://iplhq.org/ls-world-report-on-landslide/) に掲載されています。
LS-RAPIDの基本コンセプト
すべての応力と変位は水平面に投影され、計算されます(Sassa, 1988)。このLS-RAPIDモデルは、最初、2006年のレイテ島の地すべり(豪雨の後の極めて小規模な地震によって発生)に適用され、その理論と適用結果が、Sassa et al. (2010)によって公表されました。下の図の左上の図は、降雨による間隙圧比と載荷された地震波形を示しています。
Link to LS-RAPID video: https://youtu.be/Rb1VJ5EoI5I
次いで、2014年に広島市で発生した豪雨による表層崩壊の発生-規模の拡大と流下-住宅地域への突入(高速長距離土砂流動)に適用しました。地震波の代わりに10分間雨量から推定した間隙圧係数の変化を誘因として入力しています。
Link to LS-RAPID video: https://www.youtube.com/watch?v=Sp-JIQoi87M&t=18s
文献
Sassa K (1988) Geotechnical model for the motion of landslides. In: Proc. 5th International Symposium on Landslides, “Landslides”, Balkema, Rotterdam, Vol. 1. pp 37-56.
Sassa K, Nagai O, Solidum R, Yamazaki Y, Ohta H (2010) An integrated model simulating the initiation and motion of earthquake and rain induced rapid landslides and its application to the 2006 Leyte landslide. Landslides 7(3):219–236.
Sassa K, Fukuoka H, Sato Y, Takara K, Huy L, Setiawan H, Pham T, Dang K (2014) Initiation mechanism of rapid and long runout landslides and simulation of Hiroshima landslide disasters using the integrated simulation model (LS-RAPID). Proc. of the International Forum “Urbanization and Landslide Disaster, pp 85-112 (in Japanese).
ソフトウェアと試行版のダウンロード
LS-RAPIDはウェブサイトから入手でき、試行版は無料でダウンロードできます(http://www.godai.co.jp/en/soft/product/products/LS-Rapid/)。
LS-RAPID Japanese Manual
http://icl-jp.iplhq.org/wp-content/uploads/2017/11/LS-RAPID-ManualJpnVer2017.pdf
応用例(ICL World Report on Landslides)
雲仙眉山の巨大地すべりの報告: http://iplhq.org/report/unzen-mayuyama-megaslide-2/
1792雲仙眉山地すべりのYoutubeビデオ: https://www.youtube.com/watch?v=GwAWjdXXNbk
高野台地すべりの報告: http://iplhq.org/report/takanodai-landslide/
高野台地すべりシミュレーション Youtubeビデオ: https://youtu.be/y-wh0RBfKWU
Basic Concept of LS-TSUNAMI
このモデルは、最初に仮想的な単純は沿岸地すべりが、海底に入ることにより津波が発生し、地すべり土塊が海底を移動し、発生した津波が伝搬する様子を再現する場合に適用した(次の最初の図)。
ついで、1792年に日本の雲仙眉山で大規模地すべりが発生し、その土塊が有明海に突入することによって発生した津波について適用した。この災害は、日本の歴史上最大の地すべり災害である。(次の2番目の図)
Link to LS-TSUNASMI Video: https://youtu.be/QoQboDi7dQw
文献
Intergovernmental Oceanographic Commission (IOC) (1997) Numerical method of tsunami simulation with the leap-frog scheme. IUGG/IOC Time Project IOC Manuals and Guides, No.3, UNESCO. 126 p
Sassa, K., Dang, K., Yanagisawa, H. et al. (2016) A new landslide-induced tsun ami simulation model and its application to the 1792 Unzen-Mayuyama landslide-and-tsunami disaster. Landslides, Vol.13 (6), pp. 1405–1419.
ソフトウェアと試行版のダウンロード
LS-TSUNAMIはウェブサイトから入手でき、試行版は無料でダウンロードできます(http://www.godai.co.jp/en/soft/product/products/LS-Rapid/)。
LS-Tsunami Japanese Manual:
http://icl-jp.iplhq.org/wp-content/uploads/2017/11/LS-Tsunami-ManualJpnVer2017.pdf
応用例(ICL World Report on Landslides)
1792雲仙地すべりと津波災害の報告:
http://iplhq.org/report/1792-unzen-landslide-and-tsunami-disaster/